
Nike Pooh-Bah (1993)
ナイキ・プーバーは1993年の登場のアウトドア系サイクリングシューズ。
MTB、オフロードライドに特化したデザインは、スエードとテキスタイルを組み合わせた90年代ACGな質感が特徴。アウトソールにあるパッドをはずすとクリート取り付け可能で、ビンディングペダルに対応しました。オールドMTBファンにはカルト的な人気を持つ隠れた名作です。
オリジナル・ビンテージ ファーストバージョン
ウィスコンシン州ミルウォーキーに住むAndrewさんのコレクションから。
グリーンのスウッシュが鮮やかな最初期バージョンです。

Nike Pooh Bah
via. Andrew/flickr
ナイキ・プーバーはオフロード系のサイクリングシューズとして登場。
特徴的なストラップは、前年1992年リリースのバスケットボールシューズ「エアレイド」のデザインを活用しています。

Nike Air Raid
via. Nike.com
マルチカラーで編まれたアッパーは現在のニット系シューズの元祖とも言える質感で、ダークな色調+蛍光系原色の組み合せはまさに初期ACGのカラーリング。ベルクロ仕様のストラップにはアメコミ調のフォントでPOOH-BAHの文字が入ります。

via. Andrew/flickr
さらにその右側に注目。
一番右のHの文字の隣には「!」にも兼用できるようにデザインされた、不思議な形のマークがついています。

Pooh-Bah Logo
via. Andrew/flickr
万博記念公園の太陽の塔にも似ていますが、おそらくこれは「バッファローの角付き帽子」を象形化したもの。「フリントストーン」へのオマージュでしょう。下から矢印で「コレコレ」と指しています。
石器時代を舞台としたアメリカのテレビアニメ「フリントストーン」では、主人公フレッドが秘密結社「the Loyal Order of Water Buffaloes」に参加。ユニフォームは水牛の角のついた帽子で、その中の一番偉い位を「Grand Pooh-bah」と呼んでいます。

Grand Pooh-bah
via. Hanna-Barbera
このプーバーの持ち主であるAndrewさんのflickrコメント欄には、ナイキ・プーバーが1990年代初頭リリースであること。プーバーを設計したのは、ラバドームと軽量ハイキングカテゴリーを生んだデザイナー、トリップ・アレン氏である。などの指摘があります。
関連記事:ナイキ・ラバドーム(Nike Lava Dome)

via. Andrew/flickr
アウトソールにはグリーンのナイキロゴが。クリート(ペダルとシューズを固定するための金具)が取り付けられています。サイズはUS11.5 /EU45.5 台湾製
未使用ビンテージ。 ファーストモデル
Retrobikeに出品された未使用のナイキ・プーバー。イタリア在住alasaさんのコレクションから。

Nike Pooh-bah (never used)
via. alasa/retrobike
こちらのモデルはどちらも奇跡の未使用。発売当初の状態をキープしています。
注目すべきはアウトソールに着いている真っ赤なパッド。このパッドをはずしてクリートを装着する仕様になっていました。

via. alasa/retrobike
スウッシュとアウトソールのナイキロゴ、インソールに蛍光系のグリーンがアクセントになっています。

via. alasa/retrobike
セカンドモデル。 1995年製プーバー
ebayにコレクターズアイテムを出品するアメリカ人johnbuckleyさんのコレクションから、1995年製のナイキ・プーバー

Nike Pooh Bah ACG Mountain Bike Cycling Shoes (1995)
via. johnbuckley/ebay
ファーストと比較すると素材やカラーリングなど変更が見られます。
アッパーはベーシックなキャンバス地に変わり、差し色も落ち着いた印象に。さらにファーストモデルには無かった「三角形のACGロゴ」がヒールサイド部分とアウトソールに付いています。

via. johnbuckley/ebay

via. johnbuckley/ebay
アウトソールのパッドは外され、シマノ製のクリートが取り付けられています。

via. johnbuckley/ebay
サイズはUS Men’s 7.5 EU 40.5

via. johnbuckley/ebay
未使用。 1996年製プーバー
こちらもセカンドモデルですが、未使用のデッドストック、箱有り!
ebayにビンテージアイテムを出品するアメリカの方sandie62653さんのコレクションから。

Nike Pooh-Bah Tu Cycle Shoes (1996)
via. sandie62653/ebay
こちらもヒールサイド部分にオレンジの三角ACGのマークが刺繍されています。

via. sandie62653/ebay
未使用なのでアウトソールの初期設定がよくわかります。こちらはクリート装着部分のカバーを六角棒レンチ的な金具で外すタイプです。

via. sandie62653/ebay
カラーは、Black/vintage Green-Cocoa
サイズはUS 8 EUR 41 中国製。

via. sandie62653/ebay
箱のデザインから翌年1996年以降のモデルと思われます。

via. sandie62653/ebay
発売当時の雑誌広告から。
老舗アウトドア情報誌「バックパッカー・マガジン」1995年4月号に掲載されたナイキACGの広告から。
MTBライダーの写真を大胆な構図で切り取り、自転車用シューズの新製品「プーバー」を大きくプロモーションしています。

Nike Pooh-Bah ACG Biking Shoe
Magazine Advertisement (1995)
広告ではプーバーの性能の高さを紹介し、さらに写真のプーバー様が私たちに語りかけているかの体で、自然との接し方を注意喚起しています。
「私たちは大聖堂や美術館、寝室やその他の聖域に、自転車に乗って入っていくようなことはしません。
それと同じように森林や山や砂漠の渓谷と接しましょう。」これは自転車用シューズ「プーバー」のお言葉です。
クリップレスペダルとの互換性があり、クッション性の高いEVAヒールウェッジ、そしてミッドソールのシャンクは頑丈なサーモプラスチック製。
こういった仕様は、プーバーがこのジャンルの中で最もすぐれている理由です。

Nike Pooh-Bah ACG
「プーバー」という名前の由来
「pooh-bah」という単語は名詞として英和辞典に載っています。
weblioによると
一度に多くの役職を兼ねる人、尊大で無能な役職兼務者
[The Mikado の登場人物から]
とあります。
さらに、この「The Mikado」を調べると
『ミカド』 (The Mikado、or、The Town of Titipu ) は、ウィリアム・S・ギルバート脚本、アーサー・サリヴァン作曲による二幕物のコミック・オペラ。
ということです。
「ミカド」は1885年ロンドンのサヴォイ劇場で初演された喜歌劇の古典。
物語の核は当時のイギリスの上流階級や支配階級への風刺ですが、遠い異国、日本の「Titipu」を舞台にすることでオブラートに包んでいます。
主人公のひとりであるプーバー(またはグランド・プーバー)は、財務大臣や主席裁判官、軍の最高指揮官、市長など高位の役職をほぼ持っているが、死刑執行だけはしない(やりたくない)という役どころ。

ジョン・プレイヤー社製のシガレットカードに印刷されたMIKADOのキャラクター達。左上が「プーバー」。
via. inthouseofcards/ebay
ロンドンでは人気の超ロングランな演目である反面、アメリカでは「イエローフェイス問題」で炎上し、講演キャンセルとなるなど、現在ではなかなかデリケートな作品です。
アニメ「フリントストーン」に登場する「偉い地位」も、TVドラマ「ハッピーデイズ」でグランド・プーバーになったリッチーのお父さんも、ミカドのキャラクターが元になっているということです。

ソーシャルグループ「レオパード・ロッジ」に参加するお父さん。そこで後にグランド・プーバーになる。
Happy Days (1974-1984) via. ABC
また、ヒップホップ界でグランド・プーバを名乗るのは、1990年デビューの重鎮グループ「ブランド・ヌビアン」のフロントマンで本名、マックスウェル・ディクソン氏。
1990年代のステージではナイキを愛用したグランド・プーバですが、MTBシューズ「プーバー」とのネーミングの関係性は無いとスニーカー研究家のゲイリー・ワーネット氏が指摘しています。

Grand Puba on In Living Color
via. 20th Century Fox TV
当時の人気TV番組「イン・リヴィング・カラー」に出演のグランド・プーバ(1992年)。ファーストアルバム「リール・トゥ・リール」のプロモーションのため、USラップチャート1位に輝いたシングルカット曲「360 Degrees (What Goes Around)」をパフォーマンスしています。

Grand Puba on In Living Color
via. 20th Century Fox TV
ラルフローレンのマウンテンパーカーに、ナイキ・エアリバデルチを合わせた、90sアウトドアなコーディネート。
「歴代名作トップ25モデル」に輝く 名作ナイキ・プーバー
ニューヨーク発のカルチャーメディア「ハイスノビエティ」
2014年6月に特集された「ナイキACG・歴代トップ25」という企画記事から。

ナイキ・プーバーは上から1段目、右から2番目のモデル。
Top 25 ACG Models of all time
via. highsnobiety.com
The 25 Best Nike ACG Models of All Time : highsnobiety.com
ナイキのアウトドア・カテゴリ「ACG」から、歴史に残る名作トップ25モデルを選出という魅力的なこの企画。
ここではサイクリングシューズの異色モデルとして、ナイキ・プーバーを選出しています。
「選考委員長」は、スニーカーの歴史研究家で、スニーカーライターとして知られるゲイリー・ワーネット氏。今は亡きロンドン発の伝説のスニーカー・プロジェクト「クルックド・タンズ」の元メンバーとしても知られる人物です。

Nike Pooh-Bah (1993)
via. highsnobiety.com
ナイキ・プーバー(1993年)
「プーバー」という名前は、エアリバデルチをステージで着用していたラッパーとは何の関係もありません。
このモデル、実はサイクリングシューズですが、1990年代初頭のACGが持つ美学に溢れています。
アウトソールにあるパッドを外すことで表れるプラスチック製シャンク「C.O.R.P.Sゾーン」はさまざまなペダルシステムに対応。
その奇異なデザインは、エアレイドとナイキのハイキングシューズを合体したようです。
「オール・コンディション・ギア」カテゴリーからは、いくつか協力なマウンテンバイク・シューズがリリースされましたが、プーバーはその中で最も記憶に残るモデルのひとつでした。
関連記事:ゲイリー・ワーネットが選ぶ「ACG」名作スニーカー 25選!
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