最強コーディネートはサミュエル・L・ジャクソンに学べ!「カンゴール」の80年

LL Cool J / Going Back To Cali (1987)

LL Cool J / Going Back To Cali (1987)
via Def Jam Recordings


「カンゴール」誕生80年を記念して、北米のヒップホップ系月刊誌「ザ・ソース」のオンライン版では特集記事を掲載。

ヒップホップのカルチャーをアメリカ・サウスダコタ州にある大統領の胸像にたとえ、カンゴールがヒップホップに及ぼした影響を考えると、大きな彫像が出来てもおかしくない、と形容しています。

Kangol: Over 80 Years Of Style, 30 Years Of Hip-Hop Influence / The Source

ラシュモア(4人のアメリカ大統領が刻まれている山)のような記念碑が存在するならば、「カンゴール」のハットはヒップホップ・ファッションを象徴するひとつとして刻まれるでしょう。

しかし、ニューヨークのストリート・パーティーでブレイクビーツが鳴り響き、B・ボーイたちが段ボールの上でくるくると回転していた頃よりはるか以前、英国の帽子製造メーカー「カンゴール」は独自の歴史を築いていました。


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イギリス生まれの老舗帽子メーカー「カンゴール」

Woman carrying Kangol berets, Cleator, Cumbria, 1948.

カンゴールの工場(イングランド北西部カンバーランド)でベレーを運ぶ女性
1948年
via gettyimages / Hulton Archive


第一次世界大戦の帰還兵であったジャック・スプライゲン氏は、1920年代頃から帽子の輸入業をスタート。軍用や労働者用に、フランスから輸入したバスク・ベレーの販売を開始します。

1938年には本社工場が開設され、自社ブランド「カンゴール」製品の製造を開始。

「Kangol」の名前の由来で、最も広く知られる説として、Knitting(ニット)の「K」、Angora(アンゴラ)の「ANG」、Wool(ウール)の「OL」を合体したもの、があります。

Kangol wear limited berets (kangol)

第2次世界大戦中、英国軍のために製造されたカンゴール製ベレー帽。
(1942年〜1945年製)
via warrelics.eu


Kangol Cap ad (1950s)

カンゴール社ウール製キャップの広告(1950年代)
via kangol


第二次世界大戦が始まる頃には、英国軍が使用するベレー帽の大手供給業者にまで成長。

1948年に開催されたロンドンオリンピックでは、イギリス代表選手の全員がカンゴールのベレーを着用しています。

ビートルズの帽子

1960年代、カンゴールは「ティーンエイジャー」をターゲットとしたプロモーションを開始。

リバプール出身のビートルズがアメリカに初上陸を果たし大成功を収めた1964年、カンゴール社は公式グッズとして、帽子の製造販売権を取得。カンゴール製の「ビートルズの帽子」でイギリス国内はもちろん、海外のティーンエイジャーへ向けプロモーションを開始します。

Beatles hat worn by German girl (1964)

ビートル・キャップをかぶるドイツ人女性(1964年)
via gettyimages


バリエーションはウールフェルト製の「ベレー」と、つばのある「キャップ」の2タイプ(キャップは頭周りとつばの部分がニット素材)。デザインはEileen Greig(アイリーン・グレイグ)によるもの。

The Beatles Beret, Cap & Swatch Samples

ベレーとキャップ。素材の色見本
via ItsOnlyRocknRoll.com/ icollector


どちらもギターのイラストが付いたビートルズロゴのワッペン付き。22色展開で販売されました。

A Beatles Kangol Cap, Black (UK, 1964)

A Beatles Kangol Cap (UK, 1964)
via Heritage Auctions


A Beatles Kangol Cap, Black (UK, 1964)

via Heritage Auctions


もちろん、販売促進の一環として、メンバー自らが着用しプロモーションを行っています。

Ringo Starr(1960s)

ビートル・キャップをかぶるリンゴ・スター(1960年代)
ビートルズ・スウェットは、ネムズ・エンタープライズ社製。
via The Beatles


John Lennon (1960s)

ビートル・キャップをかぶるジョン・レノン(1960年代)
via The Beatles


12色のマリー・クワント・カラー

さらにカンゴールはデザイナーとのコラボラインを積極的にスタート。

Mary Quant x Kangol Big Beret (1967)

Mary Quant x Kangol Big Beret (1967)
via Mary Quant/Kangol


1967年には「ミニスカート」の生みの親、マリー・クワントとのコラボ・コレクションとして、カラフルな12色の「ビッグベレー」をリリースしています。

Mary Quant x Kangol Big Beret (1967)

「ミニドレス」と「カラータイツ」と「ビッグベレー」(1967年)
via Mary Quant/Kangol


Mary Quant Navy wool beret (1966 designed /1973 made)

Mary Quant Navy wool beret (1966 designed /1973 made)
via V&A


以来カンゴールは帽子産業の最先端メーカーとして、ビートルズからダイアナ妃に至るまで、時代を超越した様々な傑作モデルを生み出しています。

プリンセスが愛したカンゴール

カンゴールが英国王室御用達ブランドとして最も注目を集めたのが、1980年代、ファッションアイコンとして世界中を魅了したダイアナ元妃のオーダーメイドハット。

当時カンゴールのデザイン・ディレクターを務めたグレアム・スミス氏は、軍関連施設を訪問するダイアナ妃のために、ミリタリー調のカンゴール・ハットを製作しています。

Princess Diana in La Spezia, Italy, April 1985.

ストライプスーツはキャサリン・ウォーカーのデザインによるもの。
イタリア海軍の軍港都市、ラ・スペツィアを訪問したプリンセス・ダイアナ。
1985年4月
via gettyimages


Princess Diana At Sandhurst, April 1987.

ミリタリー調のスーツはキャサリン・ウォーカー氏のデザインによるもの。
サンドハースト王立陸軍大学を訪れたプリンセス・ダイアナ。
1987年11月
via gettyimages


Princess Diana In Bonn, Germany, November 1987.

スーツはアラべラ・ポーレン氏がデザイン。
ドイツの都市ボンを訪れたプリンセス・ダイアナ。
1987年11月
via gettyimages


ヒップホップ・アイテムとして再評価

1980年代まで話を進め、舞台をアメリカに移すと、新たなカルチャーとしてヒップホップが発生。

ヒップホップは、ファッションの定番アイテムに独自の様式を加え、濶歩(かっぽ)することで、全く新しい息吹を与えました。

真っ赤な起毛素材のバケット・ハット「バミューダ・カジュアル」を着用したLL・クール・Jから、セカンド・アルバム「ザ・ルーラーズ・バック」のジャケットでカンゴールを着用したスリック・リックまで、スラム街のスーパーヒーロー達は全く新しいカウンター・カルチャーに多大な影響を及ぼしました。

関連記事:RUN-DMCは、何が画期的だったのか?

LL・クール・Jとカンゴール

Radio / LL Cool J (1985)

Radio / LL Cool J (1985)
via Def Jam Recordings


LL・クール・Jのデビューアルバム「レディオ」の裏ジャケットから。真っ赤なカンゴール「バミューダ・カジュアル」とエアジョーダン・ファーストを着用。曲のヒットと共にカンゴールハットは彼のトレードマークに。

こちらは2年後、セカンドアルバム「BAD」発表の頃のLL・クール・J。真っ赤なカンゴール・バミューダ・カジュアルと、トゥループのトラックスーツを着用。

LL Cool J, Queens,NY (1987)

LL Cool J, Queens,NY (1987)
via Mark Seliger


スニーカーは一見、アディダスのフォーラムに見えますが(というか激似ですが)、こちらもトゥループ。プロエディションの3本線バージョンです。

こちらはブラックのカンゴールと、ニューヨーク・メッツのスタータージャケット。まさにスタンダードなコーデです。

LL Cool J (1987)

LL Cool J (1987)
via Def Jam Recordings (1987)


スリック・リック、ファーゴラとヒップホップチェーン

ロンドンはサウス・ウィンブルドン生まれ、ニューヨーク・ブロンクス育ちのラッパー、スリック・リック(本名リッキー・ウォルターズ。)

デビュー当時よりカンゴールを愛用。

Slick Rick (1988)

Slick Rick (1988)
via Glen E. Friedman


特に毛足の長いふわふわファブリック「ファーゴラ」を使用したカンゴールを好んで着用しています。

The Ruler's Back / Slick Rick (1991)

The Ruler’s Back / Slick Rick (1991)
via Def Jam Recordings


ふわふわカンゴールが入ってこないほどに、スリック・リック氏のカスタムジュエリーはゴージャスが振り切っていますが、コンプレックス・マガジンの「歴代ヒップホップ・チェーンランキング・ベスト50」では、堂々2位を獲得しています。

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公式「カンゴール・キッド」

ヒップホップ・グループ「UTFO」の「カンゴール・キッド」は、カンゴールと正式に契約を結んだ初めてのラッパーでした。

ヒップホップ・グループ「UTFO」のセカンドアルバム「スキーザー・プリーザー」の裏ジャケより。白いカンゴールキャップを被った中央の男性が「カンゴール・キッド」こと、シラー・ショーン・フィクワイア。

U.T.F.O. ‎– Skeezer Pleezer (1986)

U.T.F.O. ‎/ Skeezer Pleezer (1986)
via Select Records


ステージネーム「カンゴール・キッド」はダンスユニット「キーストーンズ」時代から使用。

インタビューによると
  • 高校に入って服装が自由になった(それまでカトリックの学校だった)のではじめてカンゴールの帽子を買った。
  • 毎日眼鏡をかけている人のように、カンゴールを毎日かぶっていないと違和感のあるキャラだった。
  • アーティストとなり「カンゴール・キッド」の名前でレコード会社と契約した。
  • 帽子の会社「カンゴール」からレコード会社に「カンゴールという名前の使用に関して停止通告」の手紙が来た。
  • 当時は17歳だったので意味がわからなかった。
  • しかし、グループがライブに行った都市で「カンゴール製品」の売上が上がったことが判明。
  • めでたく公式にカンゴールとのスポンサード契約が成立。ヒップホップ界では初のカンゴール・アーティストとなった。
ということです。

さらに、MCシャンや、ノトーリアス・B.I.G.、ミッシー・エリオットなど、アーティスト達の歴史的な写真にカンゴールは登場しています。

カンゴールと、赤と黒のプーマ

クイーンズ出身、MCシャンのデビューアルバム「ダウン・バイ・ロウ」のカバーアート。

Down By The Law / MC Shan (1987)

Down By The Law / MC Shan (1987)
via Cold Chillin’ Records


真っ赤なカンゴール・バミューダ・カジュアルとプーマのトラックスーツ。

Down By The Law / MC Shan (1987)

via Cold Chillin’ Records


スニーカーは左右色の違うプーマ・スエード(右が赤、左が黒)を着用しています。

MC Shan (by George DuBose)

ジャケット写真のデジタルリマスター版
MC Shan (by George DuBose)
via George DuBose / House of Roulx


ノトーリアス・B.I.G.と504

ニューヨーク出身、ノトーリアス・B.I.G.(1972-1997)はハンチング型の定番504を愛用。

The Notorious B.I.G. (1994)

The Notorious B.I.G. (1994)
via David McIntyre


Big Poppa」や「One More Chance」などヒット曲のPVで、カンゴールを着用した在りし日のビギーを見ることができます。

The Notorious B.I.G. / Ready To Die (1994)

The Notorious B.I.G. / Ready To Die (1994)
via Bad Boy


ミッシー・エリオット流
「オールドスクール・リバイバル」

ミッシー・エリオット最大のヒットアルバム、2002年リリースの「アンダーコンストラクション」から。

Under Construction / Missy Elliott(2002)

Under Construction / Missy Elliott(2002)
via Elektra / Jeff Reidel


ブックレット用の写真で着用しているのは、真っ白なファーゴラのバケット・ハット。ゴールドストライプのトラックスーツとゴールドスニーカー。

カンゴールとアディダスをド直球にフィーチャーし、オールドスクールへの原点回帰を宣言。

また、MVでもそのコンセプトを極めています。

Gossip Folks / Missy Elliott (2002)

Gossip Folks / Missy Elliott (2002)
via YouTube/WMG


衣装にカンゴールとアディダスをフィーチャーした(アンダーコンストラクションからの)セカンドシングル「ゴシップ・フォークス」のMVから。

Gossip Folks / Missy Elliott (2002)

via YouTube/WMG


衣装を担当したスタイリスト、ジューン・アンブローズ氏のインタビューによると、ブルーの学校ジャージのシーンでは「衣装を制服にするアイディアはミッシーによるもの。アディダスのスーツをイエローにカスタムし、スニーカーはアディダス・サモアを使用。カンゴールのバイザーはネオンイエローに染めた」と語っています。

Gossip Folks / Missy Elliott (2002)

via YouTube/WMG


MVには、D.M.C.ことダリル・マクダニエルズ氏がスクールバスの運転手として登場。また、当時無くなった3人のアーティスト(アリーヤ、TLCのレフト・アイ、ジャム・マスター・ジェイ)がグラフィティ・アートとして描かれ、リスペクトを捧げています。

関連記事:アディダス・スーパースター(adidas superstar)

映画「ニュー・ジャック・シティ」のカンゴール

カルトムービー「ニュー・ジャック・シティ」のニーノ・ブラウン役、ウェズリー・スナイプスもイカしていました。

こうした映画は定番キャップ「504」のバック・トゥ・フロントスタイル(カンガルーロゴを前にしてかぶる)のポピュラー化に一役買ったといえます。

「ニュー・ジャック・シティ」は1991年公開の、ニューヨークを舞台としたギャング映画。ウェズリー・スナイプス演じるニーノ・ブラウンは、新興組織「キャッシュ・マネー・ブラザーズ(CMB)」を率いクラック(結晶状のコカイン)で裏社会のドンに成り上がっていきます。

New Jack City (1991)

ニーノ・ブラウン役のウェズリー・スナイプス。
New Jack City (1991) via Warner Bros. Pictures


舞台は1986年のニューヨーク・ハーレム。映画では組織のユニフォームとして、またハーレムの若者の必須アイテムとしてカンゴールが登場しています。

New Jack City (1991)

右から、ニーノのボディーガード、ダダーマン(ビル・ナン)、ジー・マネー(アレン・ペイン)、ニーノ・ブラウン
via Warner Bros. Pictures


New Jack City (1991)

ニーノの幼なじみでCMBの副リーダー、ジー・マネーを演じたアレン・ペイン(中央)
via Warner Bros. Pictures


麻薬捜査官スコッティはカンゴール「504」をバック・トゥ・フロントスタイルで着用。売人として組織に潜入していきます。

New Jack City (1991)

覆面刑事スコッティ・アップルトンを演じたアイス-T。
via Warner Bros. Pictures


サミュエル・L・ジャクソンに学べ!最強コーディネート

映画「ジャッキー・ブラウン」でオデール・ロビーを演じたサミュエル・L・ジャクソンは、劇中のオデールようにカンゴールをいつも愛用。


パム・グリア主演。クエンティン・タランティーノが脚本、監督を手掛けた1997年公開の映画「ジャッキー・ブラウン」。

サミュエル・L・ジャクソンが演じたオデール・ロビーのファッションは、カンゴール・コーディネートのお手本です。

関連記事:クライドに学べ!最強コーディネート

Jackie Brown (1997)

via Miramax Films


Jackie Brown (1997)

via Miramax Films


Jackie Brown (1997)

via Miramax Films


Jackie Brown (1997)

via Miramax Films


Jackie Brown (1997)

via Miramax Films


Jackie Brown (1997)

via Miramax Films


ショッピングモール「デル・アモ」のシーン。オデールは、赤のカンゴールに半袖のベロアニット(こちらもカンゴール製)を合わせています。

パム・グリアが演じたジャッキー・ブラウンは、ノースリーブのトップスと合わせエレガントに着用。フードコートでジャッキーとオデールは架空のチェーン店「テリヤキ・ドーナツ」のドリンクを飲んでいます。

Jackie Brown (1997)

via Miramax Films


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