Sports Illustrated Magazine January 29 1968 image from Sports Illustrated
大学3年生のルー・アルシンダー(カリーム・アブドゥル・ジャバー)は、UCLAブルーインズでのレギュラー2シーズン目であり、彼の選手キャリアにおいて最初に怪我に苦しんだ年でもありました。
1968年1月12日、UCLA対Cal(カリフォルニア大学)ゴールデンベアーズ戦で、アルシンダーは相手チームのトム·ヘンダーソンとリバウンド争いの際に接触。
試合は94-64でUCLAがCalに勝利しますが、アルシンダーは左目の角膜を損傷したため、その後の2試合(スタンフォード大学カーディナル戦、ポートランド大学パイロッツ戦)を欠場します。
(チームのエース不在のUCLAは苦戦を強いられますが、その後2試合ともに勝利。カーディナル戦は73-63、パイロッツ戦は93-69。)
アルシンダー復活の試合は1月20日のヒューストン大学クーガーズ戦。それは「世紀のゲーム」と呼ばれる歴史的な試合になりました。
世紀のゲーム(Game of the Century)
“Game of the Century” at The Houston Astrodome January 20,1968 image from NCAA
その試合は1968年1月20日、テキサス州ヒューストンにある世界初のドーム球場「アストロドーム」で行われました。
対戦校は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)と、ヒューストン大学。ヒューストン大としては地元での開催、ホームゲームです。
UCLAブルーインズは1966年2月19日の試合以来(2シーズン半)47連勝を記録するランキング1位の強豪校。ヒューストン・クーガーズはそれに続くランキング2位で、今シーズンは17戦連勝で負け無しでした。
52,963人のドームの観客はフィールド・グラス(双眼鏡)越しに試合を見守り、初めて全米放送されるNCAAレギュラーシーズンゲームの中継番組に、アメリカ中が注目しました。
出場選手は以下の面々。ヘッドコーチは、UCLAがジョン・ウッデン(John Wooden)、ヒューストン大学は、ガイ・ルイス(Guy Lewis)です。
- UCLAブルーインズ
- リン・シャックルフォード(Lynn Shackelford) フォワード
- エドガー・レイシー(Edgar Lacey) フォワード
- ルー・アルシンダー(Lew Alcindor) センター
- ルーシャス・アレン(Lucius Allen) ガード
- マイク・ウォーレン(Mike Warren) ガード
- マイク・リン(Mike Lynn)
- ジム・ニールセン(Jim Nielsen)
- ヒューストン・クーガーズ
- エルヴィン・ヘイズ(Elvin Hayes) フォワード
- セオディス・リー(Theodis Lee) フォワード
- ケン・スペイン(Ken Spain) センター
- ドン・チェイニー(Don Chaney) ガード
- ジョージ・レイノルズ(George Reynolds) ガード
- トム・グリベン(Tom Gribben)
- バーン・ルイス(Vern Lewis)
Big EEEE over Big Lew.(ビッグEEEE、ビッグ・ルーを越える。)
3試合ぶりのアルシンダーのプレーは精彩を欠いていました。
地元の新聞ロサンゼルス・タイムズの試合後のインタビューで、アルシンダーは「試合結果は、目(の怪我)が原因ではない。」と語っていますが。彼を担当したUCLAの医者は「垂直方向の複視(物が二重に見える)の症状がある」と語っています。
ゴール近くでボールを手にするも、自ら点を決めず、ガード・ポジションのルーシャス・アレンやマイク・ウォーレンにパス、からのゴール、といった消極的なプレーが目立ちます。
この日のUCLAの得点王はルーシャス・アレンで、アルシンダーの不調をフォローし健闘しますが、それでも試合はヒューストンのペースで進みます。
この試合を支配したのは、もうひとりの長身選手、6フィート9インチ(206cm)のセンターフォワード、エルヴィン”ビッグE”ヘイズ(Elvin “Big E” Hayes)でした。
Houston’s Elvin Hayes and UCLA’s Mike Warren image from Los Angeles Times
試合終了28秒前のフリースロー。ゲームの主役であったエルビン・ヘイズ(写真右)が確実に決めた2つのフリースローが、同点に追いついたUCLAへの最後の決定打となります。(写真左は)「もうひとりの44番」UCLAのマイク・ウォーレン。
前半戦は43-46でヒューストンの優勢。後半戦はマイク・ウォーレンのロッグショットで幕をあけ、1点差まで迫りますが、アルシンダーのショットをエルヴィン・へイズがブロック。自らロングショットを決め、差を開いていきます。
へイズの的確なパス、ブロックの強さ、ショットの正確さが目立ちます。UCLAも健闘し、両者一歩も譲らず状態が続きます。突破口を開いたのはUCLAのルーシャス・アレン。
アレンがヒューストンのドリブルをカットしてショットを成功させると、いいリズムができたUCLAは、ジム・ニールセンがショットを成功し、マイク・ウォーレン、アルシンダーがそれぞれフリースローを決め、この試合初めての同点(65-65)となります。
しかしヒューストンは落ちついています。ゆっくりとパスを続けエルヴィン・へイズが右側からのショットを成功。再度ヒューストンにボールが渡っても、ゆっくりとパスを続けドン・チェイニーが確実にショットを成功します。
試合は67-69でヒューストンの優勢。「残り1分」のカウントダウンが始まります。
ゴールに近いアルシンダーはボールを持っても自分で決めず、ルーシャス・アレンにパス、確実に点を取りにいきます。ヒューストンのケン・スペインのファウルを誘い、ルーシャス・アレンのフリースロー。アレンは2本とも確実に決めこの試合2度目の同点に(69-69)。
ゴール下には「ビッグE」エルヴィン・へイズがすでに待機しています。パスを受け取ったへイズに、UCLAのジム・ニールセンが体ごとぶつけていきます。もう1点も許すわけにはいきません。2人は何度もぶつかり合い、ニールセンにファウルを宣告。残り時間は「28秒」です。
エルヴィン・へイズはゆっくりと正確に2本のフリースローを決め、再び69-71でヒューストンの優勢。
ヒューストンのケン・スペインのトラベリングからの、UCLAのスローインで果敢に攻めるもカットされ、ここででヒューストンのタイムアウト。
試合再開、残り時間は「12秒」。ヒューストン、ジョージ・レイノルズのスローインはエルヴィン・へイズが受け取り、ゆっくりとドリブル。「残り3秒」ジョージ・レイノルズに再びボールが渡ったところで、試合は幕を閉じました。
この試合での最高獲得点は、ヒューストン、エルヴィン・へイズの「39」。次点は、UCLAルーシャス・アレンの「25」。アルシンダーの獲得点は「15」にとどまりました。
1 | 2 | Total | |
---|---|---|---|
UCLA | 43 | 26 | 69 |
ヒューストン | 46 | 25 | 71 |
Lew Alcindor and Elvin Hayes January 20,1968 image from NCAA
(写真上)「ビッグE」こと、エルヴィン・ヘイズ(#44)と、「ビッグ・ルー」ルー・アルシンダー(#33)。敵無しであったアルシンダーにライバルが登場、苦戦を強いられた「世紀のゲーム」からのジャンプボールの瞬間です。上記の「スポーツ・イラストレイテッド 1968年1月29日号」の表紙には別ショットが使用されました。
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