アディダス LA トレーナーは、1980年代初頭に登場した軽量ランニングシューズ。
大きな特徴はミッドソールのヒール部分にある3色のピン。これを入れ替えることでクッショニングをカスタムできるというもの。
初代モデルは「ロサンゼルス・トレーナー」というネーミングで1980年に登場し、ロス五輪のあった1984年には「LA トレーナー」と改名しています。
アディダス LA トレーナー 新作・新色コレクション(amazon)
発売当時のカタログより。
1981年発行のアディダス・カタログより、「ロサンゼルス・トレーナー」として掲載された初期のもの。
3494 ロサンゼルス・トレーナー
バリオ・ショック・アブソープション・システム(vario-shock-absorption system)を採用した革新的なトレーニングシューズ。
- 軽量なアッパーはナイロンメッシュ製、足元の風通しの良さを実現します。
- 特別仕様のランニング・トゥボックスは運動の自由度を高め、爪先のけがを防ぎます。
- 衝撃吸収性に優れたウェッジ・ミッドソールはポリエア製。
- 耐久性のあるラバー・アウトソール。衝撃吸収を高めるために、(ソールに対して)スタッドが斜めに付いています。
- ベロアレザーの補強が快適性を保証します。
- プレモールド成型によるヒールカウンター、後ろ足の安定性のために内蔵されています。
- バリオ・ショック・アブソープション・システムにより、ランナーの体重や走り方、地面の種類にあわせて、それぞれ自分に合った状態に調整することができます。
ヒールにある青・赤・白のボタンのようなものが「バリオ・ショック・アブソープション・システム」です。
バリオ・ショック・アブソープション・システム
バリオ・ショック・アブソープション(Vario-Shock-absorption)は直訳すると「さまざま・衝撃・吸収」の意味。
国内では頭文字から「V・S・A・システム」とも呼ばれる、このクッショニングの仕組みはアディダスが開発した独自技術で、1980年にリリースの「ロサンゼルス・トレーナー」、そしてその上位モデル「ロサンゼルス・コンペティション」に搭載されデビューしました。
ウェッジ(ミッドソール)の踵(かかと)部分、3色の「丸」の部分がそのシステムで、発売当時のオリジナルは取り外し可能パーツになっていました。
3色のピンが釘状(Peg)の形をしていることから「ペグ・システム」とも呼ばれています。
これは色ごとに硬度が異なり、付属の器具を使い差し替えることで、クッショニングの強弱をカスタムするというもの。
オリジナルには、交換用の「ピン」と、それを挿入・取り外すための「鍵」。
さらに「解説書」が同封されていました。
解説書より。
大まかにいうと、使用されるピンが少ないほどソールが柔らかくなる、ということです。
白いピンを入れることにより、ヒールウェッジはわずかに硬くなります。赤いピンだと中くらい。青のピンを入れるとウェッジが非常に硬くなります。
実際にこのシステム。非常に「ソフト」なものから、「ノーマル」、からの「ハード」まで、衝撃吸収の自由度は、ほぼ限りがありません。
ですから、これから提案するピンの挿入パターンは、一般的なガイドラインだと思って下さい。
上の表の見方は、60kg以下のランナーが硬い地面を走る場合(3)番の穴にはピンを通さず、残りは白いピンを2つ付けるのがおすすめ、ということです。
硬い地面(Hard surface) 中くらいの硬い地面(Medium hard surface) ソフトな地面(Soft surface) 60kg以下(135ポンド) 60kg 〜 75kg(135 ポンド〜165 ポンド) 75kg以上(165ポンド) ( )ピン無し
(W)白いピン
(R)赤いピン
(B)青のピン
踵(かかと)にかかる衝撃を吸収することが、
なぜ重要なのですか?あなたがジョギングをしているとき。まず地面に触れるのは、踵です(イラスト1)。
テニスやボーリングなど、他の多くのスポーツでは、踵部分で減速・滑りが発生します。
その足は非常に短い距離で減速し、ほぼゼロになります。
高い制動力は必然的に、ランナーのスピードと体重、地面の状態、さらに足と靴への衝撃吸収の質に依存します。
ジョギングの場合、体の垂直方向に働く重さは、体重の2倍以上に達します。
この垂直力が、その間にも数千回繰り返されるということです。残念なことに、踵の骨は、一体型のコンパクトな部品で構成されているにすぎません。
それは、衝撃吸収のためのアーチを形成する他の足の骨ほど、弾力性はありません。
したがって、過負荷による損傷を回避するために、特に踵部分のソールの構造は、優れた衝撃吸収性を提供しなければなりません。
衝撃吸収ウェッジ(ミッドソール)に加えて、
なぜ「バリオ・システム」が必要なのでしょうか?先に述べたように、力が発生する位置と分布(イラスト2)は体重、路面、走り方によって左右されます。
特に地面と踵との接触点が、ランナーによってそれぞれ大きく異なるからです。
これら多種多様の要求に応えるために、アディダスの調査研究部門は、密度の異なる3種類のピンを備えた、いわゆる「バリオ・ショック・アブソープション・システム」を開発しました。
今回初めて、ピンの位置と密度を変えることで、皆様の個々のニーズ(体重、走り方、路面の種類)に対応。
踵周りの衝撃吸収の度合いを、広範囲に渡って変更できるようになりました。
ピンの挿入と取り外し
(A)キーを回して穴に通します。
(B)ピンをキーにねじ込みます
(C)キーを引き抜き、ピンを定位置に残します。
注意:
技術的な理由から、ピンの長さは1種類のみでご利用いただきます。
小さいサイズの靴で使用する場合、ピンの長さをハサミで調整する必要があります。
それぞれのピンは走行中、ソールから少し外に突き出た(小さな円盤状の1番目が見える)状態にしておかなければなりません。
取り外す
「鍵」を穴に押し入れることで、ソールからピンを引き出すことができます。
それぞれの体重、さまざまな路面に、 これ1足で対応。
発売当時の雑誌広告から(1981年の頃のもの)。
やっとキタ! 最もあなたの足にフィットするシューズが登場です。
道路を走っている体重68kgの男性と、公園を走っている体重91kgの男性。
ふたりは同じ靴を買ってはいけませんよね?そうです、同じ靴では間違いです。
しかしそれでは正解ではありません。
つまり、もし彼らがふたりとも、アディダスの新製品「ロサンゼルス・トレーナー」を買っていれば例外です。
アディダス・ロサンゼルス・トレーナーには、調整可能な衝撃吸収ロッドを搭載。
ランナーの体重と、ランニングコースの路面の状況に応じて、靴を微調整することができます。
「びっくりした!」ですって? いえいえ、アディダスですから。
通気性に優れたナイロンメッシュに加え、ベロアレザーがアッパーを補強。
足首とヒールにはパッドが入っています。
衝撃吸収ラバーソール。傾斜のあるマルチスタッドを搭載しています。
オリジナルビンテージ 西ドイツ製。
アディダス社のアーカイブ・ルームに所蔵される西ドイツ製、LAトレーナーのオリジナル。
製品解説には「LA Trainer」と表記されていますが、ストライプにモデル名のプリントが無い最初期「ロサンゼルス・トレーナー」時代のモデル。
ミッドソールのひび割れは、ポリウレタンの経年劣化(加水分解)によるもの。
アディダス LA トレーナー 新作・新色コレクション(amazon)
復刻モデル
2016年にリリースされた復刻バージョン。
「3色のピン」を再びカスタマイズ可能にしたことでも話題となった限定復刻モデルです。
adidas Originals La Trainer OG Pack | Now Available
公式販売店であった、ロンドンの人気スニーカーショップ「フットパトロール」のリリース記事より。
アディダス・オリジナルスから、LAトレーナーのリイシューモデルが登場です。
ピッグスキン・スエードとメッシュ素材をアッパーに、ナイロン製のタンを採用し再現。
そして最も重要なのが、ミッドソールに搭載されていたペグ・システムが本格的に復刻されます。
アディダスが「バリオ・ショック・アブソープション」(Vario Shock Absorption)と名づけたシステム。
着用する人の快適レベルに合わせて、3つの「ペグ」を使いぴったりと調整することができます。
オリジナルカラーによるバージョンは、ダークマリンとダークブルーの組み合せに、落ち着いたシルバーがアクセントに。
もう一方のバージョンは、シンプルなグレーにヴィンテージ・ホワイトを効かせています。
コーディネートの汎用性が高い、ダークグレーバージョンがアップデートカラーとして同時リリース。モノトーンに「3色のピン」が際立つ好配色です。
ドイツ製最期のモデルがドイツ製として復刻。
こちらはアディダス・オリジナルスのプレミアム・ライン、アディダス・コンソーシアム(adidas consortium)から2016年に限定復刻されたLAトレーナーです。
かつてドイツ工場で製作されていたLAトレーナーが再びドイツメイドで復活。
国内では限られた店舗(ドーバー・ストリート・マーケット・ギンザやスタイルス代官山、アンディフィーテッド、福岡のダイス・アンド・ダイスやミタスニーカーズなど)のみの限定展開されました。
公式販売店だった、スコットランド・アバディーンの人気スニーカーショップ「ハノン」のリリース記事より。
adiidas Consortium LA Trainer OG MIG /Hanon
スポーツ競技場(アリーナ)でのスニーカーの寿命は、
街で見かける前に、ほんの一瞬で終了します。当初はスポーツフィールドやジムのために設計されたモデルも、
タウンユース用として使用される場合もよくあることで、
伝説的な地位を得るためには、どちらの活動の舞台(アリーナ)でも機能的である必要があります。
2016年夏、アディダス・コンソーシアムは私たちを1984年の世界へ。
それは長い間、垣根を超えた古典として親しまれたパフォーマンスシューズ、LAトレーナーが生まれた年です。さらに1984年はアディダスに大きな変化があった節目の年でもあります。
アディダスはバイエルンの本社から生産を移転し、長期にわたってシリーズ化された「都市をテーマにしたシューズ」が終了したのも1984年でした。
都市モデルとして最期のモデルであると同時に、ドイツ生産ラインの最期のスニーカーのひとつであるLAトレーナー。
確かに、時代の終わりを象徴していただけかもしれません。しかしその重要性はその後も続きます。
30年以上にわたりスタイルを保ち続け、フットウエアが目指す方向を技術的にも導いてきました。
スエードアッパーとトレフォイル・ロゴは、LAトレーナーにビンテージ感溢れる印象をあたえ、さらにミッドソールに隠された最先端の技術がさり気なく作用しました。
「ヒールペグ」(または「バリオ・ショック・アブソープション・システム」)を調整することでアスリートは、体重や走り方、路面に応じてクッショニングを試すことができました。
現在はいわゆる「元祖」としての地位に限定されがちなLAトレーナーですが、それはアディダスが初期に行ったパーソナライズ(個人カスタマイズ)の実験とスタイルの提案、そして美学の記録。
機能と技術的なことだけでなく、洗練された控え目な表現の形をとりながら、その後数十年にわたり話題は途切れることがありません。
そして32年の歳月を経た今年。アディダスからLAトレーナーが復活を果たします。
このコンソーシアムモデル、アディダスが本社を構えるヘルツォーゲンアウラハの近く、シャインフェルト工場で生産されたもの。タンにはドイツ製を証明する印が施されています。
メタリックな装飾とシュトックマイヤー社製のメッシュ素材を採用。これは1984年バージョンにも使用されていたドイツ産のハイテク繊維です。さらに、ストライプ一番上の(LA Trainerの)文字を排除。
コンソーシアム・バージョンは、全盛時代の「古典」を忠実に再現するため全力を尽くしました。
競技用モデルから都会的なカジュアルシューズへと、難なく移行することができた、伝説的なスタイルがここにあります。
こちらの復刻モデルにも3色のピンと、装着・取り外し用のキーが付属。カスタム可能となっていました。
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